仕事柄、ベテラエンジニアから新人エンジニアまで様々な方から技術的な質問を受ける。
転職した当初は電話での質問が苦痛だった。
まず相手の話している言葉が分からない。
別に不思議な言語で話しているわけでは無く、日本語で普通に話しているのだが、いくつも聞いたことの無い単語が出てくる。
調べて回答する旨を伝えて、再度回答を折り返すという形にしていたものの、電話がかかってこないように祈る毎日だった。
そんな時、当時の先輩から、メールできた問い合わせでも、電話をするように言われた。
それでなくても電話を避けていたのに、自分から電話するなんて有り得ないと思ったものの、自分から電話をしていくうちに、重要なことに気づかされた。
聞かれたことに答えるだけでは不十分、相手がなんのために質問してきていて、いつまでにその質問を解決する必要があるのか、他に引っかかっている質問がないのかまで踏むこんで回答しなくてはいけないと。
当時の私は聞かれたことに答えるのが精一杯で、プラスアルファの回答は全くできていなかった。質問してくる人のレベルもまちまち、緊急度もそれぞれで、メールの文面だけでは分からないこともある。
ユーザーによっては、なにを聞けば答えが出せるのか分からない状態で質問してくることもある。こんな場合は、質問されたことに答えても、別の疑問がわくだけで、根本的な解決はできない。なにを質問しても課題が解決しなければ、ユーザーによっては、聞くことをやめてしまうかもしれない。
タイトルの「デザイン思考が世界を変える」でも同様の気づきをもらった。
p.56を少し引用すると、
人間の抱える基本的な問題とは、人間は不便な状況に適応するのに長けているということだ。そのため、自分がシートベルトの上に座ったり、手に暗証番号を書き留めていたり、ドアノブに上着をひっかけたり、自転車のチェーンを公園のベンチに留めたりしていることに、気づいてさえいない場合も多い。「顧客に何が欲しいかと尋ねたら、もっと速い馬が欲しいという答えが返ってきただろう」と述べたヘンリー・フォードは、この点を理解していたのだ。
この文章にはハッとさせられた。
正に自分もユーザーの想像の枠内でしか応えていなかったからだ。
技術者として、そんなレベルで満足しているわけにはいかないと強く思った。ユーザーの質問から、本当はなにが必要なのか、相手の先々の要望まで見据えた回答ができて、初めてプロフェッショナルな技術者として胸を張ることができると、改めて考えなおすきっかけになった。
本書は目次がマインド・マップになっており、マインド・マップの勉強になるかと思って衝動買いしたが、マインドマップの習得以外にも様々な気づきを得ることができ、満足できる一冊となった。
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